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The Longest one-way Ticket ~最長片道切符の旅・2005春~


第9日目 会津若松→柏崎 自然の猛威

ドテッ!そんな音がしたと思うと、腰に激痛がやってきた。アイスバーンとなった歩道で、足を滑らせて転倒したのだ。今まで北国を旅してきて、一回も転倒しなかったのだが、今回は思いっきり転倒した。雪が降りしきり、しかも気温が低いという事で、歩道は何メートルに及びアイスバーンとなっていて、まともに歩くことはできない。気をつけてはいたのだが、昨夜はあまり寝られず、寝不足が足元を狂わせた。ともかく、痛みで眠気が吹っ飛んでしまった。しかしながら、相変わらずのアイスバーン歩道が続き、油断も隙もあったものではない…冷や汗が頬を伝わる。途中の苗木に雪が氷着して、樹氷のようになっている。

危険な歩きの果て、ようやく会津若松駅に到着した。安心したのか、トイレに行きたくなる。朝のお通じをすませて、さっそく改札を抜ける。ホームに行くと、すでに新潟行きのディーゼルカーがエンジン音を響かせて止まっていた。しかし扉が開いていないので、寒いホームでコーヒーを買っていると、車掌が私に気づき、ドアを開けてくれた。ありがたい。車内は暖房が効いて、外は別世界である。発車時間が迫ると、続々と乗客が乗ってきた。朝早いが高い乗車率で、高校生もかなり乗っている。まだ7時前というのに、なかなか長い通学だ。

会津若松発6時55分。エンジンを唸らせて、2両編成の列車は会津若松を後にした。山の稜線に朝日が見えるが、今日は雲が空を覆っている。そして、地上は見渡す限り雪で真っ白である。地面はもちろんの事、山や木も真っ白。特に木々は、枝まで真っ白に雪で覆われており、さながら樹氷という感じである。実際に凍っているのかもしれない。なんだか、別世界に来てしまったかのような印象を受ける。北海道とは雪の質が違うのか、北海道の雪の風景とはまた違う、重厚感のある白い世界が広がる。雪は降っていないが、かなりの冷え込みで、窓に手を当てるとかなり冷たい。駅に着いて扉が開くと、冷たい風が一気に車内に入り込む。それを防止するため、ドアは手で開けるようになっているのだけれど、通学の高校生が駅ごとに乗り込んでくるので、効果はあまり無いようだ。

ラーメンの街、喜多方に7時20分に到着。ほとんどの高校生が下車し、車内にはほとんど人がいなくなった。ここで車内放送が入る。どうやら、大雪のために、山都駅からは徐行運転を行うということで、新津には30分遅れるとの事。昨日、会津若松駅の駅員が言っていたことが現実となりそうだ。とりあえずは、新津まで行くらしいので、そこだけが安心だ。

喜多方を出発すると会津盆地も終わり、一気に山越えになる。山の雪は一層凄みを増し、木の枝は、雪の重みで今にも折れそうだ。外の気温も一層寒くなり、車内との温度差で窓は直ぐに真っ白になる。景色を見たい私は、ハンカチでそれをふき取るのだが、直ぐにまた白くなる。山都到着7時33分。ここで、再び車内放送は入る。どうやら上りの列車が遅れているらしく、その到着を待って発車するので、しばらく停車するとの事。新津へは40分ほど遅れるらしい。次第に雪の影響が出てきているようだ。外に出てみたが、頬を切り裂くように風が冷たい。気温も低い。かなり厚着をしているのだが、それでも寒いと感じる。早々に車内に逃げ込む。雪も降り出し、これから先の行程が思いやられる。

7時56分。ようやく上りの列車が到着し、出発。すでに20分遅れているが、この先は日出谷駅まで徐行運転をするので、遅れはさらに増すようだ。新津での乗り換え時間を多めに取っておいて正解のようだ。再び列車は、山間部を進み、左側から阿賀野川が寄り添ってくる。白い木々に阿賀野川の静かな流れ。自然の雄大さの前に一人の人間など小さなものなのだと、思い知らされる、いやむしろ自然が教えてくれているのかもしれない。そんな印象を受ける。列車は、20キロくらいでゆっくりと進む。普段なら、もっとスピードを出して進む区間だろうけれど、その徐行のおかげでゆっくりと風景を楽しむ事が出来る。地元の人やJRの人は、それどころではないのだろうけれど、旅人にとっては嬉しい。

野沢駅に30分ほど遅れて到着するが、再び上り列車と交換するために、足止めを食らう。ホームにもかなりの雪が積もっていて、この後の列車の時刻も大幅に乱れそうだ。その証拠に、待てど待てど、上り列車が到着しない。すでに、1時間近い遅れである。途中で脱線していないか不安だ…。本来、鉄道というのは雪に強い乗り物である。特にディーゼルカーは、架線もいらないので一層雪に強い。ゆえに、国道が通行止めになっても鉄道は平常通りに運転しているのをよく雪国で見かけるのだけれど、さすがにこの雪ではそうはいかないらしい。

9時近くなって、ようやく上り列車が野沢駅に姿を現した。野沢駅を脱出する。しかし、徐行運転は続く。雪はいっそう強く降り、すでに日は昇っているのだが辺りは薄暗い。積もっている雪もその高さを増してきて、雪崩でも起きれば、列車はすぐに脱線、転覆しそうだ。少々不安がよぎる。その不安を知ってか知らずか、相変わらず阿賀野川は我知れずと流れている。

しかし、その不安も杞憂に終わり、無事に日出谷駅に着くと、列車はスピードを上げて山間部を抜け、越後平野へと列車は下る。車窓は相変わらず白一色だが、エンジン音が静かになった事が安心感をもたらす。途中五泉という駅に着く。この駅は思い出深い駅で、父と一緒に蒲原鉄道という私鉄に乗りに来た。蒲原鉄道は、昔は五泉から信越本線の加茂駅までを結んでいたのだが、山間部を通るために人があまり利用せず、加茂-村松間が廃止され、五泉―村松間のわずか2キロしか残っていないというミニ私鉄であった。五泉駅を降りると、小さいホームに葡萄色と黄色に塗られた古い一両だけの電車がぽつんと止まっていて、哀愁を漂わしていていい感じだった。車内もニスの匂いがする木張りの床で、タイムスリップしたかのような感を受けた。しかし、その蒲原鉄道は廃止されてしまい、五泉駅の小さなホームも跡形も無く壊されていた。なんだか寂しい。列車は越後平野をかなりのスピードで走り、新津には90分遅れで到着した。

今度乗る信越本線の長岡行きは11時29分発で、到着したのは11時前。ギリギリで間に合った。越後平野に下りて、雪は降っていないのだが、強烈な風がホームを駆け抜けている。かなりの風速だ。嫌な予感がする…

11時29分の列車をホームで待つ。しかし、29分になっても列車はやってこない。どうしたのかと思っていると、やはり風の影響で遅れているらしい。今日は雪に風にと、自然との戦いだ。5分ほど遅れて、列車が到着。再び、白い世界の中を列車は走る。が、やはりダイヤは乱れて徐行したり、飛ばしたりと慌しい。長岡には30分遅れて、12時54分に到着。次に乗る上越新幹線、MAXとき315号の乗り換え時間は10分しかなく、急いで新幹線乗り換え口に向かう。新幹線自由席特急券を購入して、改札を抜けて、ホームに上がる。自由席の号車にたどり着くといい具合に列車が入ってきた。やれやれである。どうやら、上越新幹線は通常通り運転しているようだ。MAXときはE1系という車両で、12両編成のすべてが2階建て車両という豪華な列車だ。乗ったからにはと、早速2階席へと足を運ぶ。普通の車両とほんの数十センチの違いだが、やはり優越感に浸れるのはいい。実際外の眺めもよく見える。MAXときは越後平野を快走し、食器の街、燕三条を過ぎ、新潟に到着した。

さて、新潟駅に着くとやっかいなことになっていた。というのも、これから乗る越後線がどうやら強風の影響で運転を見合わせているらしい。改札口の掲示板にもその旨がひっきりなしに流れている。すでに柏崎のホテルを予約しているので、何とか柏崎までたどり着きたい。改札口の前で情報を収集する。駅員にも聞いたが、その返事はいいものではない。運転をしている信越線で向かおうかとも思うが、翌日以降の行程がすべて変るという事態になってしまったので、却下する。すると、電光掲示板が変り、どうやら途中の吉田駅までなら徐行しつつも行くとの事になった。吉田駅は、弥彦線も分岐しており、いざとなったら信越本線にも抜けられるので、とりあえず、14時20分発の吉田行きに乗りことにした。

14時20分新潟発。なかなかの乗車率である。信越本線と分かれると、列車は右にカーブし、新潟市街地を周って、信濃川の鉄橋を渡る…のだが、鉄橋の手前でなぜか停止した。車内放送が入り、強風のために徐行して鉄橋を渡るとの事。鉄橋には防風のフェンスがない。不安げに列車はそろりそろりと列車は進む。時々風に煽られてゆれる。スリル満点だ。なんとか無事に渡りきり、白山駅に3分遅れで到着。この先もこのような感じで進むらしい。しかも、越後線も単線なので交換列車が遅れると直ぐにこちらにも影響が出る。案の定、交換待ちで段々と遅れが広がってきた…。しかも、天気は雨と雪が同時に降ってきて、不気味だ。どっちか一つにしてほしい。

吉田には1時間ほど遅れて到着した。どうやら運転を見合わせていた区間も回復したらしく、無事に柏崎にいけそうだ。さっそく柏崎行きに乗り込む。遅れを回復すべく、列車はかなりの速度で走る。もともと線形がよくないので、かなりの揺れだ。連結器もギシギシと変な音が鳴っている。17時半、1時間ほど遅れて柏崎に無事に到着した。やれやれといった感じだが、遅れた分車窓も楽しめ、それなりに楽しむことができたし、なんだか得した気分になった。

ホテルに荷物を置いて、駅前にあるコーヒースタンド「駅前」という店に入った。このお店の主人は鉄道好きで店内には所狭しと鉄道のグッズが飾ってある。なんと、お店の椅子は昔の客車の物という懲りようだ。さっそくコーヒーをご馳走になって、旅の疲れを癒した。
by sojo_skyline | 2005-02-23 23:22 | 旅行記

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最長片道切符で行く日本縦断の旅
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