人気ブログランキング | 話題のタグを見る

The Longest one-way Ticket ~最長片道切符の旅・2005春~


第3日目 釧路→小樽 北海道最後の夜

第3日目 釧路→小樽
第3日目 釧路→小樽 北海道最後の夜_c0047256_7294417.jpg


携帯の目覚ましで、目を覚ます。時間はまだ4時を回ったところだ。さすがに眠い。早起きしたのには理由があって、釧路を6:00に出る各駅停車、滝川行きの普通列車は何を隠そう日本で最長の距離を走る列車なのだ。けれど、この列車は帯広で列車番号を変えて、快速「狩勝」となって滝川まで行くため、実際の最長距離を走る鈍行は滝川を9:38出る釧路行きの2429Dという列車だ。だが、私が乗る列車も同じ距離を走るので、最長である事には変わりない。小難しいが、要するにはこの列車に乗りたかった。昨日の宿泊先を釧路か帯広かで悩んだが、せっかくならばと、この列車に始発駅から乗る事にしたのだ。だが、さすがに辛い。カーテンを開けると、雪がかなり降っており、駐車場の車は雪だるまのようになっている。

5時ごろホテルをチェックアウトし、駅へと向かう。辺りはまだ真っ暗だ。歩いて駅に着いて、いざ待合室に入ろうとドア開けようとするが、開かない。よく見ると、「釧路駅の利用時間は5時半から」となっていて、コンコースの扉も鍵がかけられている。列車に乗る前に、駅蕎麦でも食べようかと思ったのに、予定外だ。寒い。仕方が無いので、近くのコンビニで朝食を買おうと、店に入ったが、今度は店員がいない。すいません!と叫んだが、出てくる気配がない。お金だけ置いて、もって帰ろうかと思ったが、さすがに万引きと間違えられると問題なので、何もせず引き返す。しかし、店員は何をしていたのだろう…

自動販売機でコーヒーを買い、とりあえず温まる。すると、やっと駅のドアが開いてやれやれという感じだ。だが、安心したのか一気に眠気が襲う。せっかくの旅なので、できるだけ列車の中では起きていたいが、今回は無理のようだ。

列車の改札が始まったが、ホームには列車がまだ入線していなかった。寒いホームでしばらく待つ。雪は相変わらず、降り続き、風も強い。気温はかなり低い。再び自動販売機で、コーヒーを買ってとにかく眠気を覚ますのと、体をあっためる。しばらく待っていると、帯広方からライトが見えて、ようやく列車が入線。車両はキハ40。国鉄時代からずっと使われている車両だ。車内の扇風機には国鉄を示す「JNR」の文字が刻まれている。一昨日も乗車したけれど、他の車両よりもこの車両の方が、私は好きである。発車を待っていると、独り言をブツブツ言っている外国人が乗り込んできた。何を言っているのか、さっぱりだが、ひたすら喋った後、優先席に寝転がって深い眠りについてしまった。今日は、平日である。この後、当然通勤・通学の乗客が乗ってくるだろう。大丈夫なのだろうか…

定刻6:00、車体をブルブルと震わせて出発する。まだ暗い釧路市内を走る。車窓は昨日の釧路湿原の続きのような風景が続くが、工場がかなり立ち並び、道路の交通量も多い。駅に着く度に高校生が乗ってくる。彼らは朝から元気だ。昨日のサッカーの話題で盛り上がっている。例の外国人はいびきをかいて、ぐっすりと眠りについている。6時38分白糠着。昔は、ここから北進までの白糠線というローカル線があった。昭和55年の国鉄再建法で特定地方交通線の廃線第1号となり、昭和60年に姿を消した。しかし、その遺構はまだ数多く残っているようで、廃線跡を巡る人は多い。乗客がけっこう乗ってきた。

白糠を出ると、海の傍を走る。空は厚い雲に覆われていて、辺りも暗い。しばらく、列車は暗い中を進む。この辺りの車窓は変化に富んでいて、海に湿原にと見るものは多いが、睡魔に襲われそれどころではない。それでも、朝は始まっていて、ビジネスマンや学生が乗ってくる。けれども、思ったよりも数は伸びない。すれ違う列車は3両もつないでいた。どうやら、この辺りの生活圏の中心は釧路の方にあるようだ。旅をする者にとっては、静かな車内が保たれていてすこぶる快適である。眠気も一気に襲ってくる。

池田着8時11分。ここで、後ろに車両を連結させる。連結される車両は、池田と昨日出発した北見を結ぶ第三セクターの北海道ちほく高原鉄道の車両だ。この鉄道会社は、旧国鉄の池北線を引き継いだのだが、元々沿線住民が少ないため、巨額な赤字で苦しんでいる。最近では、廃止の噂が絶えない。その車両を連結し、2両編成になった列車に、かなりの乗客が乗る。多くの乗客は帯広まで行くようだ。ちなみに、まだ外国人は爆睡している。どこまで行くのだろう…

池田から帯広までは約30分。帯広に近づくと高架橋になり、定刻通りに到着した。多くの人が下車し、ホームでは多くの人が列を成している。ほとんどの人は、札幌行きの特急「スーパーおおぞら」に乗るようだ。この列車は、この根室本線のエースとも呼べるべき列車で、札幌と道東を結ぶ航空路線のシェアを奪ってしまった。以前は、かなりの時間を有していたのだが、振り子式といってカーブを速く走れる車両を導入し、スピードアップに成功したのだ。最盛期には11両編成もつなげて走るとの事。さて、私はというと、その特急を見送り、快速「狩勝」のお世話になる。特急に抜かれるため長時間停車をするので、一旦改札を出て、名物駅弁の「豚丼」を買いに走る。紐を引っ張ると温まるという面白い容器に入っていて、温かい。そしておいしい。1日に駅弁は1回と決めているが、今日は北海道最後の夜だから、よしとする。さて、一ボックスに大体一人ずつ座り、定刻通り快速「狩勝」は帯広を後にした。キハ40は、元々近郊型だが、かなりのスピードを出している。あと3時間、この列車のお世話になる。

列車は帯広市内を抜けると、広い十勝平野を進む。牧場が次々と現れる。牛も寒そうに、集団で集まって寒さをしのいでいるようだ。そんな雄大な牧場をみていると、心が広々してくる。十勝平野が過ぎると、新得駅に停車。ここから、狩勝峠越えに入る。昔は、日本三大車窓と謳われたこともある、十勝平野を一望できる所を通っていたが、勾配が急なため、現在の路線に付け替えられた。新線は狩勝峠をトンネルで一気に駆け抜けていく。ゆえに、その美しい車窓も見る事はできない。快速「狩勝」はその新線をかなりのスピードで駆け抜ける。といっても、80キロくらいだが。新得-落合間は一駅にも関わらず、駅間が30キロほどあり、途中多くの信号所がある。いずれも、分岐器をフードで覆い、雪対策は万全のようだ。北海道の鉄道は、冬季でもこうして安全と正確な運行が保たれているのは賞賛すべきものがあろう。その、信号所をいくつか通過し、落合信号所で、石勝線と別れる。石勝線は1980年代に根室本線と南千歳(以前は千歳空港駅)をショートカットするべく建設された路線で、特急はそちらを通る。こちらは、根室本線を延々と走る。山々は雪で真っ白に覆われており、白と黒のコンストラストが非常に美しい。車内は、家族連れが乗っていて、楽しそうだ。昔の自分を思い出すようで、しみじみとした感じ。途中、幾寅駅に停車。ここは、映画「鉄道員(ぽっぽや)」の舞台になった駅で、現在も撮影時に使われた駅舎がそのままで残されている。私も、この映画をテレビで見たのだが、見た感じでは、田舎の小さな駅という感じであったのだが、意外に開けていて、家も多く、少々興ざめだ。

富良野着11時32分。私は、富良野線を進むので、この快速「狩勝」ともお別れだ。5時間もお世話になったので、少し乗り換えるのに寂しさを覚える。富良野線の列車は最新鋭の気動車で、一気に時代が変わったような印象を受ける。車内はそこそこの混雑。狩勝峠はあまり天気が安定していなかったが、富良野は晴れている。だが、顔に当たる風は冷たい。さて、定刻通りにドアが閉まったのはいいが、なかなか列車が動かない。運転士もあれ?といった感じで、マスコンをフルノッチに上げる。すさまじいエンジン音のあと、ガクッという衝撃でようやく出発。富良野線沿線は、夏ともなるとラベンダー畑や多くの花と緑で覆われるのだけれど、それらは雪に覆われている。けれど、天気がよく雪景色も美しい。けれど、富良野線沿線は意外にも開けていて、狩勝峠のような雄大な自然は拝める事が出来ないのは残念だった。途中峠越えもあったが、それ以外はごく平凡の路線だった。やはり、富良野線は夏に来るべきなのだろう。旭川市内に入ると無人駅でも、かなりの乗客が乗ってくる。旭川には12:50の定刻に到着。私は、旭川から岩見沢に向かうのだが、岩見沢までは丁度よい普通列車がなく、仕方ないので特急に乗る。岩見沢からの室蘭本線の列車に間に合う特急は3本あって、そのどれに乗ろうかと悩んでいたが、昨日見た特急「オホーツク」に乗ろうと思う。オホーツクは定刻より4分ほど遅れてきた。気動車特急だが、快走を見せる。旭川-札幌間は直線区間が多く、かなりのスピードが出せるようで、「オホーツク」もかなりのスピードをだす。札幌と旭川は北海道第一の都市と第二の都市。ゆえに、沿線には工場やら家やらが立ち並んで入るけれど、その向こうには雄大な自然が広がっていて、北海道らしい景色を楽しめる。

岩見沢着。しばらく時間があるので、駅前の食堂で蕎麦と卵賭けご飯を食べる。久々に食べるご飯はとってもおいしかった。しかも値段の割りに大盛りで出てきたので、さらに嬉しかった。

岩見沢から室蘭本線、苫小牧行に乗車。キハ40の2両編成で、乗客はまばらだ。岩見沢を発車すると、一気に左にカーブして函館本線と分かれる。再び雄大な自然が広がる。黄昏時で、なんともいえない幻想的な光景だ。白い雪原に、空は薄っすらと赤く染まる。栗山駅に着く。ここは、夕張からの夕張鉄道が接続していた駅で、石炭輸送の拠点として賑わった駅だ。けれども、エネルギーの主流が石油となり、夕張の炭鉱も閉山し、夕張鉄道も姿を消した栗山駅はひっそりとたたずんでいる。

列車は、進み追分へ到着。先ほど分かれた石勝線と再会する。人の乗り降りがあって、南下する。石勝線は、ここから真っ直ぐ南千歳を目指している。かなりのショートカットだ。

沼ノ端が近づくと、遠くに工場群の煙突が見え始め、コンビナートもあるようだが、近くは新興住宅街の様相を呈している。上を見上げると、新千歳空港へ着陸するべく飛行機が飛んでいた。上も下も、賑わっている。さて、沼ノ端に16時25分に到着。けれど、せっかくなので終点の苫小牧まで行ってみることにした。千歳線の列車も沼ノ端から出ている。進行方向左に工場群を眺め、苫小牧着。ここから、岩見沢行の「電車」に乗り込む。思えば、この2日間電車に乗っていなかった。北海道は広い。

さて、列車は快調に飛ばす。今までがゆっくりとした気動車の旅だったので、その快走ぶりに少し目が狂う。新千歳空港の脇を走り、南千歳着。ここで、快速エアポートに乗り換える。別に、このまま岩見沢行きに乗っていてもよいだが、久々にエアポートに乗りたくなった。快速エアポートは、デッキまで人が溢れていた。けれど、札幌まで30分弱とかなりの速度で飛ばす。夕暮れが迫る北の大地。今日で、北海道の夜ともお別れだ。少し感慨深い。

札幌には定刻に到着。丁度夕方のラッシュに当たる時間帯で、札幌駅は多くのサラリーマンでごった返していた。今までの旅でこんな風景とは全く無縁だったので、少し圧倒される。大都市の風景はどこへ行っても同じだ。さて、今日の宿泊地は小樽としているが、ちょっと札幌で途中下車して、ブラブラと駅前散策。しっかし、札幌駅も変わってしまった。

小樽には19:00ごろ到着。実は、小樽では「第7回小樽雪あかりの路」というイベントをやっているらしいので、ホテルで荷物を置いてさっそく見学へ。小さなカマクラにローソクの灯りを入れて、ライトアップするというもので、かなり綺麗。しかし、天気はあいにくの吹雪で、とても長時間見ていられない。それでも、1時間くらい小樽の街を散策した。港町小樽。石原裕次郎も愛したこの街で、北海道の最後の夜を過ごした。
by sojo_skyline | 2005-02-17 23:59 | 旅行記

<< 小樽      沼ノ端で千歳線に乗り換え。小樽... >>

最長片道切符で行く日本縦断の旅
by sojo_skyline
S M T W T F S
1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
31