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The Longest one-way Ticket ~最長片道切符の旅・2005春~


第7日目 米沢→一ノ関

起きると、冷や汗で全身がぬれていた。というのも、車に轢かれるという夢を見たからだ。非常に目覚めが悪い。でも、カーテンを開けると気持ちいいほどの冬晴れである。悪夢のことなど吹っ飛んでしまう。

さて、宿を出て駅まで歩く。青空が広がっているものの、風は非常に冷たい。米沢は盆地なので、どうやら放射冷却状態にあるようだ。昨晩は結構雪が降ったらしく、かなりの雪が積もっていた。自然と歩く速度も速くなる。米沢駅に着いて、まず駅弁を探す。昨日、米沢牛の駅弁を食べようかと思っていたのだが、ちょうど閉店の時間で運悪く買えなかった。今日こそは、と思ったのだけれど、あいにく売り子さんはいなかった。残念だけれど、すでに列車の発車時刻も迫っているので、仕方がないが改札を抜ける。プラットホームに立つが、風が冷たい!せめてもの抵抗に、缶コーヒーを飲む。

米沢発7時14分。山形行きの普通列車は、通勤・通学の客で混んでいた。けれど、2駅先の高畠駅で降りることになっているので、立つ事にした。列車は雪を巻き上げながら疾走する。高畠着7時24分。さっそく改札を抜けると、左手には「ゆ」の文字が見える。この高畠駅は、駅舎の中には温泉が沸いていて、山形新幹線も止まる、温泉のある駅として有名になった。さっそく、入浴料300円を払って朝風呂へ浸かる。脱衣所に行くと、地元の人たちが結構利用していて、賑やかである。さっさと服を脱いで、湯船へ。思わず「気持ちいい!」と声がでる。溜まっていた疲れも吹っ飛んでしまった。もう少しゆっくりしていたいのだが、あいにく次の列車の発車時刻が迫ってきたので、温泉を後にした。しかし、体が軽くなった感じで、非常に気持ちがよい。

高畠発8時15分。山形行きの普通列車はスーツ姿の人や、学生で混んでいた。日本の都市の朝はどこへ行っても変らない。外も見られないので、ボーっと乗っていると、先ほどまで晴れていた天気が悪化してきた。山形で観光でもしようと思ったのだが、残念である。山形着9時59分。列車からはいっせいに学生と、サラリーマンが階段へと走る。なかなかせわしい。改札をくぐって、ファーストフード店で朝食をとる。雪は強さを増してきて、風も非常に冷たい。

仕方が無いので、新庄行きの列車を待つ。山形発9時59分。ラッシュの時間も去ったので車内は静かだ。ふと見ると、先ほどの雪が嘘のように青空が出てきた。今日は運が悪いらしい。列車はさくらんぼの畑の中を進む。山形県はさくらんぼが名産である。その畑の向こうに雪を被った山々が連なっていて、なんとも言えず美しい。途中、さくらんぼ東根駅で、山形新幹線「つばさ」に追い越される。新庄まで山形新幹線が開通して、山形-新庄間もかなり様変わりして、新しい駅舎が多く建てられている。さくらんぼ東根もその一つである。その後も、果物畑の中を列車は進み、新庄着11時12分。新庄駅は山形新幹線の終着駅として大幅に改良されて、全部のプラットホームへ段差なしに行けるようにしている。車椅子の人にも移動しやすいという考慮されていて、なかなか素晴らしい。改札をでると、「新庄山車祭り」の山車が迎えてくれた。駅舎の中には、新庄の自然を学べる資料館もあって、なかなか楽しい。荷物をロッカーに預けて、さっそく駅前を歩く。すると、「急行食堂」の文字が見えた。この食堂は、テレビ東京系のTVチャンピオン「新幹線王選手権」で登場し、山形新幹線開通記念の「つばさっ子ラーメン」が話題となった。ちょうどお昼時なので、暖簾をくぐる。見知らぬ客に驚いたのか、おばちゃんは「うっ」という声を出したが、直ぐに「いらっしゃい」と威勢のいい声が返ってきた。さっそく、つばさっ子ラーメンを注文する。少し時間がかかって、つばさっ子ラーメンが姿を現した。丼のでかいこと!そして、熱い!火傷しそうだ。しばし、ラーメンとの格闘が続く。ようやく食べ終わると、店に入ってから40分近く立っていた。新庄の街を観光する時間はなくなってしまった。しかし、時間がかかっただけの事はあって、なかなかおいしかった。このラーメンを食べるだけに新庄に来るのもいいかもしれない。そんな事を思いながら、新庄駅に戻る。こんどの陸羽東線は12時55分の鳴子温泉行きで、列車はすでに入線していた。再び天候は悪化し始め、雪がちらつき始めた。天気が変りやすい。

列車は定刻に出発。この陸羽東線と陸羽西線は、松尾芭蕉が歩いた「奥の細道」に沿って走っており、陸羽西線は「奥の細道・最上川ライン」、陸羽東線は「奥の細道・湯けむりライン」という愛称が付いている。最長片道切符のルートはこの「湯けむりライン」の方を通る事になっている。

奥羽本線と別れ、列車は山へ向かって進む。山が深くなるにつれ、雪も多くなるが、それほどでもないようだ。左側に最上川の支流を眺めつつ、列車は進む。電車とは違って、ディーゼルカーはエンジン音が車内にも聞こえてきて、一緒に山を登っている感じがして好きだ。個人的な趣味ではあるが。温泉地を転々とゆっくりと列車は進み、13時57分、鳴子温泉駅に到着。次の小牛田行きは1時間半後なので、滝の湯という鳴子温泉の共同浴場へと向かう。駅舎を出た途端、硫黄のにおいがして、温泉街という雰囲気をいい感じにかもし出している。温泉街を歩いていくと、奥まったところに、滝の湯はあった。そのおくには、温泉神社がある。せっかくなので、温泉に入る前に参拝しようと石段を少し登ると、境内までの道は雪で閉ざされていて進めそうにない。無理矢理に進もうとしたが、滑って転倒してしまった。幸い大事には至らなかったが、これは危険だ。仕方が無いので、石段のところで、手を合わせる。さて、さっそく温泉。滝の湯は、格式ある共同浴場ではあるが、中に入ると古き良き銭湯という感じがして、なかなか好きだ。どうやら、泉質は硫黄分が高いらしく、その匂いがすごい。しかし、お湯に浸かると体の芯から温まる感じで、気持ちがいい。思わず「いい湯だな~」と口ずさむ。のんびりと浸かって、さて湯船を出ると、地元のおじさんと入れ違いになる。私が服を着ていると、そのおじさんの歌う民謡が聞こえてきて、なんだかいいムードだ。機会があれば、ぜひもう一度訪れたいと思う。

鳴子温泉発、小牛田行きのディーゼルカーに乗る。再び、山間をディーゼルカーは進み、分水嶺のトンネルを潜ると、今度は段々と山を下っていく。天気は回復しだして、青空が見えてきた。西日がいい感じである。とちゅう、古川駅に着く。東北新幹線との分岐駅だ。鳴子温泉から乗ってきたサラリーマン達もここで下車。どうやら、東京へ帰るようだ。多くの高校生が乗ったディーゼルカーは終点の小牛田を目指す。小牛田着16時32分。小牛田は、東北新幹線が出来る前までは機関区もあって賑やかな駅であったのだが、新幹線は古川を通り、小牛田はすっかり寂れてしまっている。乗り合わせた高校生たちは、小牛田で降りるかと思ったら、東北本線、石巻線など各方面の列車へと乗り換えていった。長距離の通学、ご苦労様。

小牛田発16時50分、一ノ関行き。その高校生達も何人か乗り込むが、一駅ごとに降りていき、車内は静けさを取り戻す。すでに、黄昏時。今日も長い一日が終る。

一ノ関着17時38分。さて、ホテルについて、ゆっくりしようと思った矢先。なんと最長片道切符がない!カバンや荷物を探し回ったがない。部屋にもない。顔面が蒼白となる。急いで、部屋を飛び出し、ホテルのロビーも探したがない。どこだ!駅への道もくまなく探す。おばさんが不審者を見るような目で、私をにらむが、それどころではない。ついに駅までやってきた。ふと思い出す・・・

「あ・・・」

私は、今回の旅で駅に備え付けてあるスタンプを集める事にしている。下車印とは違うまた別の思い出になると思ったからで、大体下車した駅にあれば、スタンプ帳に押している。一ノ関でも、当然押した。その時、最長片道切符の入ったファイルを下敷きに・・・

さっそく駅員さんに聞くと、「あぁ。あれね。」と大事に保管してくれていた。

一騒動あったが、温泉に浸かることもできた、いい一日であった。
by sojo_skyline | 2005-02-21 20:04 | 旅行記

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最長片道切符で行く日本縦断の旅
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