The Longest one-way Ticket ~最長片道切符の旅・2005春~


第8日目 一ノ関→会津若松 季節の変わり目を行く

今日は、非常にハードスケジュールとなっている。なんと、一ノ関から会津若松まで一気に行ってしまうという計画だ。本来ならば、もっとゆっくりとした旅をしたいのだけれど、学生の身分であるので、なんとか春休み中に終らせなければならない。その中でゆっくりとした旅を、と思っているので、その微妙な調整が難しい。とにかく、今日は会津若松までいく。実に移動時間20時間。長い一日の始まりだ。

駅に着くと、昨日切符を保管していてくれた駅員が改札に立っていた。お礼を述べると、
「まだ列車きてないけど、ホームに入る?」
とたずねてきた。だが、外は寒気のために非常に寒い。ご好意はありがたいのだが、待合室のストーブの前で待機する。一ノ関を通過する上りの貨物列車はいずれも、雪を車体にこびり付かせている。北は大雪なのだろう。寝台特急の北斗星も4分遅れているとの事。先行きが不安である。

一ノ関発6時2分。大船渡線の気仙沼行きに乗車する。大船渡線は、「ドラゴンレール」と名前が付いている。というのも、大正時代、大船渡線の建設の際に、地元の有力議員が自分の勢力のある地域へと線路を無理やり引くよう命じた。それが、立ち代り変ったので、線路が蛇のように蛇行しながら完成した。ゆえに、「ドラゴンレール」という愛称がついたのである。列車は、体を震わせて出発。ディーゼルカーならではの出発である。車窓を楽しもうと思うのだが、時間も時間だけに真っ暗で、しかも粉雪が舞っている。今日は天気が悪いようだ。駅に着く度に高校生が乗ってきて、車内は賑やかになる。徐々に夜が明けてくるが、やはり厚い雲に覆われていて辺りは薄暗い。千厩でほとんどの高校生が下車していく。すると、天気が次第に回復しだした。しかし、雪は降っていて、おかしな天気である。7時27分、気仙沼着。列車はこの先盛駅まで向かうので、ここで途中下車する。社外に出ると体の芯から冷えるような寒さで、雪もパラパラ降っているのだが、青空が広がっている。不気味である。

次の気仙沼線の列車は快速南三陸2号、仙台行きである。この列車は指定席車も連結されており、駅の「みどりの窓口」では、仙台までの往復切符を買う人で行列ができる。快速南三陸2号が入線。最新のディーゼルカーかと思っていたのだが、旧型の急行型ディーゼルカーが4両編成でやってきた。4両のうち、3両はリクライニングシートに改造されていたが、1号車だけは時代が遡ったかのように、無改造のままであった。私はオールドファンで、こうした古い車両が好きなので、さっそく乗車する。気仙沼発8時13分。大きなエンジン音と共に、ゆっくりと発車した。ほとんどの乗客は後ろのリクライニングシートの車両に乗車したため、車内は静かだ。しかし、仙台へ向かう優等列車のため停車駅ごとに、かなりの乗客が乗ってきて、なかなか賑やかである。しかし、さすがに最新型の列車と違い、窓からは隙間風が入ってきて少々寒い。また、トイレも故障していて、3号車のトイレしか使えないようだ。少々寂しいが、古い車両というのは、こういうものだ。

列車は左窓に太平洋を望みながら進む。しかし、リアス式海岸のためか、トンネルが多い。港が見え、集落があって、駅があり、そしてトンネルに入る。これがしばらく繰り返す。気仙沼線の開通は比較的新しく、陸の孤島と言われていた同地域の人々にとっては大歓迎ムードだったらしい。一方で、当時の国鉄は巨額の赤字に苦しんでいて、気仙沼線の開通はその赤字を増やすと、冷ややかな目でみていたようだ。けれど、この快速「南三陸」を見る限りは、気仙沼線も健闘していると思う。数字を見ると、また違うのだろうけど。

志津川を過ぎると、大きく右にカーブし、太平洋と分かれ内陸に入り、車窓はのどかな田園地帯が広がる。朝霧が出ていて、非常に綺麗だ。9時27分前谷地着。

石巻線、石巻行きの列車はすでに入線していた。外は寒いので、列車の中で待つ。再び旧型のディーゼルカーだが、暖房がよく効いていて、暖かい。眠気が襲ってくる。はっと気づくと、列車はすでに石巻に着いていた。高校生が変な顔で私を見ている。車内を見ると誰もおらず、慌てて外に出る。仙石線列車は3分の接続なので、ホームを走る。仙石線の列車に乗った瞬間、ドアが閉まった。ぜいぜい言いながら、座席に着く。仙石線の車両は、山手線で活躍していたものだが、大幅に改造されていて、ボックスシートになっている。こっちの方が、景色が見やすくていい。しばらく、石巻市内の小さな駅に止まっていく。東名あたりで、やっと太平洋と再開する。すでに、日本三景の松島湾で、小さな島々が見え、静かでいい雰囲気である。松島海岸駅で途中下車して、観光でもしようかと思ったのだが、駅に着いた途端、その気は失せた。駅前には土産屋が立ち並び、港には大駐車場があって、松尾芭蕉が詠った景観が壊されていた。もう少し、考えるべきだと思うのだが
どうだろう・・・。その松島海岸駅から多くの乗客が乗って、立ち客も出た。松島海岸を出ると、東北本線と併走したり離れたりを繰り返し、再び、線路と分かれるという面白い車窓が展開する。その後、再び仙台のベッドタウンを走り、高校生も乗り込んできて、大都市仙台の装いが出てくると、仙台駅地下ホームに到着した。

仙台駅からは、福島までは東北新幹線を使う。新幹線はあまり使いたくないのだけれど、ルートでそうなっているので、仕方がない。その新幹線を待つ間に、仙台駅の名物駅弁の牛タン弁当を探す。しかし、キオスクでは見当たらない。あちらこちらの、店を探すが見当たらない。発車時間が迫ってきたので少々焦る。すると、ようやく売り子さんを見つけて「牛タン弁当を」というと、「違う店で売っています」との事。さっそくその案内されたところへダッシュし、ようやく牛タン弁当をゲットできた。新幹線ホームに上がり、やまびこ160号に乗車する。かなりの人が乗るようで、16両編成だ。仙台発12時29分。列車は、右にカーブして、仙台の街を見下ろしながら進む。さすが杜の都とあって、緑が多い。仙台は恥ずかしながら、まだ一度も歩いた事がない。次回はぜひ、ゆっくり歩いてみたいと思う。

列車は、仙台の街を抜けて、長いトンネルに入ると右手に雪を被った蔵王の山々の稜線が見える。しかし、トンネルに入っては抜けるというのを繰り返すので、じっくり見る事が出来ないまま、白石蔵王駅を通過し、蔵王の山々は後ろの方へ過ぎ去ってしまった。もう少しゆっくり走って欲しい。無理な話だが…

福島着12時53分。たった30分のために、高い新幹線特急券を払わされるのはいい気分ではないが、仕方がない。今度は、東北本線を仙台方面へ戻る。たいていの場合、新幹線は、東北本線と同じ路線という扱いで、正式には「○○新幹線」という路線はない。例えば、東海道新幹線は、正式には東海道本線だし、山陽、上越、秋田、山形もそうである。しかし、先ほど通過した白石蔵王のように、東北本線との接点がない駅を挟む区間、今回は仙台-白石蔵王-福島間は、「東北新幹線」という扱いになるのだ。非常にややこしいが、この規則が最長片道切符のルート設定には重要なキーポイントとなる。

福島発13時00分の快速仙台シティラビット号に乗車。車内は混んでいるので、デッキに立つ事にする。しかし駅に止まるたびに、乗客もほとんど降りて、車内は静かになる。車内のボックスシートに移って、車窓を楽しむ。左手には、さきほどあっという間に通りすぎた、阿武隈の山々が雪を被って連なっており、綺麗な稜線が見える。速度が遅い分、ゆっくり車窓を見る事が出来る。東北新幹線が開通して以来、多くの特急が行き交っていた東北本線は寂れてしまい、駅に止まっても乗ってくる乗客は少ない。岩沼着13時55分。常磐線との接続駅の岩沼で途中下車。さすがに、貨物列車が頻繁に行き交っている。

14時7分発の常磐線の列車は、混んでいた。さすがに仙台近郊だけに乗客が多い。東北本線と別れ、列車は田園地帯を進む。先ほど乗ってきた東北本線とあまり変らない風景が広がる。ふと空を見上げると、先ほどまで曇っていた空が段々と晴れてきた。今までとは異なり、日差しは春の装いだ。原ノ町で、特急スーパーひたちに乗り換え、いわきを目指す。原ノ町を出ると、太平洋に近いところを走る。海は真っ青で、空も青い。もう春はそこまで、来ているのだなと感じる。

いわき着16時14分。次の磐越東線まで時間があるので、街を散策する。いわき駅には、常磐線の特急を牽いた機関車の基地である平機関区があった。その遺構がないかと、駅舎の裏に回ったが機関区の跡は駐車場に変っていた。少々寂しい。駅の蕎麦スタンドで遅めの昼食をとり、磐越東線の小野新町行きのディーゼルカーに乗る。帰宅する高校生で、なかなかの盛況だ。すでに陽は暮れかけていて、黄昏の中、列車は発車した。
一駅に止まるごとに、徐々に高校生が降りていく。段々と陽が暮れていくと同時に、列車は山の中へ入っていく。やがて常陸大子を過ぎると、辺りは真っ暗になってほとんど車窓は見る事が出来なくなった。家々の光が点々とあって、それが増えると駅に停車。高校生が降りて、家族のお迎えの車にそれぞれ乗り込む。なんだか、温かい光景だ。

18時22分、小野新町着。ここで、郡山行きに乗り換える。山間部なので、気温は低い。反射的に自動販売機のコーヒーに手が伸びる。

18時45分発、郡山行きのディーゼルカーに乗車。ほとんど客は乗っていないが、列車は淡々と進む。つなぎ目を通る音がなんだか、メロディーに聞こえてくる。

進行方向の先に、街の光が見えてくると郡山の街に入り、19時36分、郡山着。今日、最後の列車は、磐越西線の会津若松行きだ。当初では、郡山で宿泊したいのだけれど、磐越西線の大雪の影響が気になったので、会津若松まで進む事にした。少々強行軍だけれど、自然には勝てない。

19時40分発の磐越西線、会津若松行きの快速列車は、ほとんど満席であった。デッキに立つ。郡山を少し出ると、段々と雪が強く振り出し、気温も下がる。列車が巻き上げた雪が、窓について凍り、外は全く見えない。暖房のないデッキは寒くて仕方がない。並行する道路のライトが見える。どうやら、かなりの雪が積もっているようだ。その雪の量が段々と増していき、街の光が見えると会津若松に着いた。20時41分。

改札を出ようとすると、駅員に呼び止められた。
「君、この先は、磐越西線を新津方面に行くのかい?」
「ええ、そうですね。明日、乗る予定です。」
「気をつけたほうがいいよ。」
「と、言いますと?」
「いやぁ…今日は雪がものすごく積もって、ほとんどの列車が新津まで行かなかったんだよ。多分、明日は大丈夫だと思うけど、一応そのつもりで。」
「あ、ありがとう…ございます…」

駅員さんは、大丈夫といったが雪は降り続けている。
不安を抱きつつ、今日の宿へ向かった。
[PR]
by sojo_skyline | 2005-02-22 23:59 | 旅行記

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最長片道切符で行く日本縦断の旅
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